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大阪地方裁判所 昭和40年(オ)5807号 判決 1968年4月27日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、

被告は原告に対し別紙目録(二)記載の建物を収去して同目録(一)記載の土地を明渡せ。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言を求め、請求の原因として、

原告は別紙目録(一)記載の土地を所有しているところ、被告が右土地上に権原なく同目録(二)記載の建物を設けて右土地を占有している。

よつて被告に対し右土地を地上の建物を収去のうえ明け渡すことを求める。

と述べ、被告の抗弁に対し、

被告が賃料と称して供託していることは認めるが、右土地を賃借しているとの抗弁事実を否認する。

と述べた。

証拠(省略)

被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として

請求の原因たる事実のうち、被告が原告の所有する別紙目録(一)記載の土地上に同目録(二)記載の建物を設けていることを認める。

被告は昭和一九年八月頃原告から、右土地上に原告が所有していた五軒長屋のうち北側から三軒目の店舗兼住宅床面積約九九・一七平方メートルを賃借して、家庭金物日用品の小売商を営んでいたところ、昭和二〇年六月一五日頃戦災によつて右建物が焼失したが、引き続き同所で営業する考えで、当時原告方の土地や建物を管理していた訴外藤本に焼失建物の敷地を賃貸してくれるように懇請し、同訴外人の承諾を得て、同年八月頃原告から別紙目録(一)記載の土地を賃料は地代家賃統制令によつて定められた最高額として毎月末日支払の約定で、同訴外人に地代先払金等として金三〇〇円を預託のうえ賃借し、同年九月頃右地上にバラツク建店舗兼住宅一棟を建築した。その後原告から賃料の取立がないので昭和三一年三月二日大阪法務局に昭和二〇年九月分以降昭和三三年一二月分迄一月金九〇円の割合による賃料合計金三、六〇〇円を弁済供託し、爾後弁済供託を継続している。

仮りに被告が右土地を賃借していないとしても、被告は昭和四〇年一月九日原告との間において、原告が計画しているビル建築に協力すべく、原告において別紙目録(一)記載の土地上にビルを建築するとき、被告は異議なく地上建物を原告の費用で収去し、予め原告が付近に設けたバラツク建店舗兼住宅を賃借のうえ移転するが、ビル完成後はその一階部分を原告から賃借し得る、との旨の和解が成立した。すなわち右土地の明渡は原告が和解条件を履行するのと引換えの関係にあるから、その同時履行を求める。

と述べた。

別紙

目録

(一) 大阪市天王寺区南玉造元町一〇番地の一

宅地 三二三・一七平方メートル(九七坪七六)

のうち約九三・二二平方メートル(約二八坪二)

但し添付図面の斜線部分

(二) 右地上

木造瓦葺二階建店舗 一棟

床面積一階 五七・四五平方メートル

二階 四一・四五平方メートル

但し現況床面積約九二・五六平方メートル

大阪市天王寺区玉造元町拾番地の壱(旧南玉造町二十七番地の六)

<省略>

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